あかしをかこんで
5.既視感を覚えた
寒気がして、目が覚める。
眼鏡をかけたまま転寝をしてしまった…。
眼鏡の下から目を擦ると、ミレーユさんが僕が起きたことに気づいた。
「あら、起きちゃった?」
「あ、はい」
ミレーユさんは薪を1本火にくべる。
小さな灯りが、人を寒がらせない程度に揺らめいていた。
「ずっと火の番をされていたんですか?」
「たまにね。身体を冷やすといけないから」
にこりと微笑むミレーユさん。
ほんのり明るい火が、ミレーユさんの金の髪を美しく見せた。
ミレーユさんの右手側でラフさんが火に背を向け、僕の右手側でハッサンさんが仰向けになって、それぞれが寝ている。
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。
ミレーユさんは「前線で戦ってくれてる彼らのサポートをするのが私たちの役目だから」と微笑んだ。
「あの」
気になってることがあって、切り出す。
ミレーユさんはこちらを見て、僕の言葉を待つ。
「ミレーユさんは…このあと起こることを、知ってるんじゃないですか?」
ほんのちょっとだけ目を開いて僕を見た。
わずかな変化だがわかる。とてもびっくりしている。
ふっと表情を緩めて、微笑んだ。
「どうしてそう思ったのかしら?」
「いえ、あの…」
どうして。
それは、ミレーユさんが、どこか達観した表情をしているから。
でも、そうとは言えなかった。
頭の中を右から左まで捜して、代わりの言葉を見つける。
「……カン、です」
ふふっとミレーユさんは笑った。
「ずいぶん鋭いカンなのね」
長い髪を後ろにさっと払うその仕草は、優美でもあり、どこか影もあった。
「確かに、私には、このあと何が起こるかがわかるわ」
けれど、と続く。
「おそらく、これから起こることは違うことなの」
そして、とさらに続く。
「その原因は、あなた」
「え…?」
言葉の意味がわからずに、首を傾げる。
ミレーユさんはふうと軽く息を吐いて、自分の右手で左肩を抱えた。
「…私らしくもない事を話してしまったわ。やっぱり、不安なのね」
「…お疲れ、ですか?」
そう伺うと、ミレーユさんは柔らかい笑みを浮かべ、否定も肯定もしなかった。
もしかしたら、聞かれたくないことなのかもしれない。
ミレーユさんは焚き火に目を移す。
僕もそれに倣い、炎を見る。
暖かい炎だった。
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