あかしをかこんで
11.仲間ができた
狭間の世界に到達してみれば、そこには"狭間"と呼ぶに相応しい荒廃した大地が広がっていた。
そして、なぜか体に力が入らない。
この状況で動き回るのは危険だということで、先遣にラファエル、ハッサン、ミレーユ、チャモロが出ている。
馬車に残されたのは、身体的変化のまったく見えないテリーと、見るからに体調不良なバーバラだった。
彼女が体を冷やすといけないと思い、テリーが1人で火を起こそうとする。
それをバーバラに目ざとく見つけられ、「仲間なんだから、それぐらい頼ってよ」とバーバラにお咎めを食らった。
仲間。
テリーは火を見つめながら、その言葉を頭の中でずっと反芻する。
この、"仲間"のいる生活を始め、1週間が経とうとしている。
最初こそ硬かったものの、今自分の緊張感はほぐれてきているのがわかる。
この緩みは、ガンディーノを旅立ってから初めての体験かもしれない。
こうして火を眺め、ぼうとすることなんて絶対にありえなかった。
いいことなのか、悪いことなのか。
「ねえ」
呼ばれたので顔だけで反応する。
バーバラのいる左に顔を向けると、頬を何かが押した。
隣に座るバーバラの人差し指だった。
テリーは無表情で返答する。
「…なんだ」
「難しそうな顔してたから」
バーバラはぱっと手を離して、言葉を続ける。
「1人で考えるのはよくないよ?」
テリーははあと息をついた。
火をつけるにしろ、悩みにしろ、溜め込まず、まずは仲間に。
こいつはそう言いたいのだ。
また"仲間"。
思ったことが口をついて出た。
「仲間ってなんなんだ」
バーバラはその言葉をはっきりと聞いた。
一瞬きょとんとして、そして目を細める。
「仲間ってね、1人で抱えられない事を、引き受けてくれるの」
それは知ってる。
そう言おうとして、テリーは口をつぐんだ。
炎に煌々と照らされたバーバラの表情がとても穏やかで、大人びて見えた。
こんな顔もできるのかと一瞬感心してしまう。
だが、それもほんの一瞬のことだった。すぐに子供っぽい表情に戻り、バーバラは話し出した。
「あたしもね、これでもいろいろあったんだよ?」
自分は「普通ではない」こと。
その「普通ではない」事実に、潰されてしまいそうになったこと。
その時に、仲間に助けられたこと。
テリーはそのバーバラの横顔を見ながら思う。
助ける、助けられる。
そのあたりが、うまく分からない。
「そんなことはないはずだよ」
バーバラはテリーをビシリと指さした。わずかにのけぞるテリー。
「あたしが調子悪そうなのを見て、テリーだって"助けたい"って思ってくれたんでしょ?」
「……それは」
テリーは迷う。
助けたい、と明確に思ったわけではない。でもなんで火をつけようかと思ったかといえば、バーバラの調子が見るからに悪そうだったからで。
…それは「助けたい」に繋がるのか?
「はじめの1歩だよ」
バーバラは満足そうに笑った。
その言葉の意味を考えて、テリーは心の中で少しだけ笑った。
なんだ、難しく考える必要は全く無い。
簡単なことじゃないか。
努めて無表情を装い、座り直す。
そしてバーバラに問いかける。
「…調子はどうだ?」
「うん、だいぶよくなった」
バーバラははぐっとガッツポーズをとった。
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