青い空、白い雲。
まるで歌いだしたくなるような天気。
でも歌っても仕方ない。今日はついに漕ぎ付けた念願の初デートなんだから!
ここまでの道は長く険しかった…。
みんなに、特にシリウスに感謝しなきゃ、だな。
まだ早い時間からそっと起きだして、いつもと変わらない髪に櫛を通した。それもいつもと変わらない、筋金入りのくせっ毛だ。
髪を櫛で押さえつけて、離してみる。
びよん、と跳ね返ってきて、思わず顔を顰めてしまった。
水で両手を濡らして、その手で頭を掻き回す。
手を離す。跳ねは直らず、ただしっとりしただけだった。
……。
タオルで手を拭いて、もう一度櫛を通す。
もういいや。普段どおりで行こう。
いや、待てよ、もしかしたらリリーはお洒落してきてくれるかもしれないし…。
そしたら普段通りな僕は彼女にどんな顔を合わせればいいのか…。
うんうん唸っていると後ろから声をかけられた。
「リリーなら普段通り行くって言ってたぞ」
振り向くと、ベッドからシリウスが起きだして欠伸をかみ締めていた。
「その癖毛が突然収まってたら、リリーもびっくりするだろな…」
言われて、自分の髪を触ってみる。
確かに、これがチャームポイントな部分もある。それが収まってたらどう感じるんだろう?
「その髪がおもしろくて好きとも言ってたな」
「よしもっと乱して行くか!」
鏡に向き直って、僕はいつも以上に髪をガシガシ掻き乱した。
「…単純な奴」
シリウスが呟いたのが聞こえた。
単純で結構。
でも、こうして何かに一直線でいられるのが1番幸せだってことを、僕も彼もよく知っている。
眼鏡越しに鏡を見る。よし、変なとこはどこもない。
「っし!」
気合を入れるために鏡の前で頬を両手でパシッと叩いた。
「気合充分だな」
「いざデート、だ!」
「健闘を祈る」
カッチリ敬礼をして見せたシリウスにウィンクを飛ばして、僕は部屋を出て螺旋階段を速足で駆け下りた。
談話室では、既に彼女が待っていた。
待ち合わせに指定していた大きな出窓の傍で。
青空を背景に、彼女はくすくす笑った。
胸がひとつ余計に高鳴った。
2.青い空の下の、君の笑顔
「ほっぺにもみじマーク付いてるわよ?」
「え? ……あ、そっか、さっき頬叩いた時に…」
「じゃあ、今日は気合の入ったジェームズに存分に楽しませてもらおうかしら?」
「……覚悟しておいてよ?」
「もちろん」